こんにちは!アルジュナの牛島樹世です。
私たちの会社はちょっと珍しい名前なのですが、今回から少し社名の由来などを交えたお話をしようと思います。
アルジュナという名前は「ナーガールジュナ」という古いインドのお坊さんから名付けました。
中国・日本では「龍樹(りゅうじゅ)」の名で知られる高僧で、世界で初めて「空(くう)」という哲学を説かれた方です。多分、歴史の教科書にも出てきたので知っている方も多いかと思います。
アルジュナのデザインには仏教の考え方が多方に散りばめられています。
私自身、400年の歴史ある寺院で生まれ、僧侶としての資格を持っていることもありますので、デザインの仕事に携わる中、要所要所で仏教思想に助けられてきたように思います。
ちょっと難しい言葉もあるかと思いますが、少しアルジュナに込められた思いをお話しようと思います。
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1.因果の道理。
「空(くう)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
一番よく耳にするお経に「般若心経」がありますが、その中に出てくるフレーズ
「色即是空、空即是色」(しきそくぜくう、くうそくぜしき)は有名ですね。
色(しき)とはすなわち簡潔にいうと人間が知覚できる事物や現象。デザインでいうところの「可視=ビジュアライズ」といったところでしょうか。
では「空」とは何でしょう。…「空しい」という日本語があることから分かるように、何もないこと、虚であること、と捉えることができます。
でも、「空もまた色である」と言っているわけですから、「空」は単に「何もない」ということではないようです。どういうことでしょう。
色が仮に「ビジュアライズ」であるなら、空は何に当てはまるのでしょうか。
例としてよく挙げるのはドーナツの穴、のお話。
ドーナツには大抵、丸い穴が空いていますよね。
「ドーナツには穴が有る」という風に言うこともできるし、「ドーナツの真ん中には何も無い」
ということもできます。ようするに「穴」という存在はあるが、物質的には何も無い。しかもそのどちらも正解であるということです。そしてさらにその二つの理論が対になっている。
ではなぜドーナツに穴が空いたのか。答えはとても簡単。小麦粉を捏ねた生地を油で揚げるときに、中までよく火が通るようにするため、です。そのことによってドーナツはドーナツというデザインになることができたわけです。このように、満遍なく火が通るように穴を開ける、という行為が縁起となり、そこに「穴」という存在が生まれた。縁(穴を開ける)が加わり、丸い小麦粉の塊(因)がドーナツ(果)となった。
この考え方が仏教の因果論です。
先ほど、色がビジュアライズなら空は何か?という話が出てきましたが、ちょっと気になってきませんか?どうもデザインという行為と関連性があるように思えてきます。
私たちはドーナツというような、可視化された結果を生むために日々デザインを行なっています。アルジュナのデザインとは計画・実行のことを指すので、ドーナツ論からいうと、丸い小麦粉の塊はクライアントさんにいただく「案件」とも言えるでしょう。そして、私たちが行うことは、思案すること・工夫を凝らすことの計画と実行になります。
結果を出すための「縁」をつなぐ大切な役割があるわけです。
こう考えていくと「因縁あっての果」という考え方に結びつき、3つの要素が同時に存在することが体感できるようになる、というわけです。
そうすると、空は決して「何も無い」ということでなく、縁が加わることによって色づき、意味が生まれ、誰かの必要な何かに転じるということ、そのプロセスと関係性がイメージできるようになる、ということです。0(ゼロ)から1に変化させる、それが私たちデザイナーのお仕事です。
今回はドーナツの話を例にあげ、ちょっと難しい空の話をしましたが、引き続きデザインを紐解く中で、考え方のヒントとなっている仏教のお話を定期的にお届けしようと思います!
それではまた次回!合掌!