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イカれた23’の事情

2024.02.15

こんにちは!アルジュナの樹世です。

年の瀬が迫りきた23’の暮れ、「一年を締め括るテーマは何だ?」
と思いを馳せておりましたが、まずはこの一年でどんな本を買ったか?ということにスポットをあててみました。
買った本を並べてみると、この一年間はどんなことに夢中になって調べたかが見えてくる。いかに、イカを愛でたかということが見えた一年間でした。
お決まりのダジャレで失礼します。はい、それでは…

1.世界で一番美しいイカとタコの図鑑


2013年、東京国立博物館で行われた「特別展〜深海」の展示でダイオウイカに魅了されてはや10年。本格的にイカの生態や美しさに興味を持ちはじめたのは今年、この美しい図鑑に出会ってからのことでした。
装丁や写真の美しさだけではなく、世界中に生息する珍しいイカタコの不思議な生態系についても解説がなされていて、イカタコ入門編としては最強。図鑑というより写真集に近いので、何も考えずにただただ眺めて楽しい一冊です。イカタコ自身の模様やカタチのデザイン性にも圧倒されます。

光ったり、踊ったり、変身したりと、様々な動きを見せるイカタコ。その不思議な生態は未だ謎が多く、世界中に研究者やマニアが存在するようです。実に宇宙の神秘をめぐる旅のような気分にさせてくれます。はあ〜美しい…(ため息)

縮小版のダイオウイカの魚拓(イカ拓)が付録!うひょ。


2.絶滅動物図鑑

「イカとタコは、元々同じ仲間だった」という進化の歴史を知った私は、夜も眠れずイカタコのことを考えるようになりました。
恐竜が生息していたジュラ期(約2億130万年前)よりはるか昔のオルドビス紀(約4億7500万年前)に遡ると、イカタコのパイセンは同じ形の尖った(鞘型の)貝殻をかぶっていました。要するに、イカタコはさらに遡ると貝類の子孫であることを知ったのです。


↑「カメロケラス(約4億4370万年前)」こんな貝殻の細長〜いイカタコの先輩貝がいたんですね〜。貝がら邪魔そう〜。

みなさんご承知の通り、「頭脳明快」のイカタコ両者は他の魚類に比べ、ズバ抜けて脳神経を発達させていきました。そして、数億年の時間をかけてイカは貝がらを体内に残したまま(裁くときに取り外す軟甲という部分です)柔らかい胴体に変化を重ね「高速で泳ぐイカ」に。タコは貝がらを思い切って脱ぎすて、真っ裸で海底を爆走する「走るタコ」の二つに別れていったのです。
私はこの二手に分かれた両者の進化の過程にどんどん興味を惹かれ、古代生物の進化を「自然界のデザイン」と捉えるようになりました。まさに、「イカタコの生物進化にデザインを学ぼう!」と思い始めたのです。


2.世界一わかりやすいイカとタコの図鑑

この本は頭足類、つまりイカ・タコ・オウムガイの生物学と行動、進化、生態学を網羅する図鑑です。テーマ別に章を設け、彼らの興味深い特徴や能力について体系立てて解説するとともに、特に注目すべき種については図鑑スタイルで個別に紹介しています。一流の水中写真家が撮影した息をのむほどに美しい写真を150点以上掲載、世界各地、サンゴ礁から深海までさまざまな海に暮らすタコやイカをフルカラーで紹介しています。

↑こちらは現在でも生息する「オウムガイ」。
こちらはイカタコ(頭足類)の先輩に当たる存在で、何億年もの間、貝がらを被ったまま数本の手足をウニョウニョ動かしながら泳ぎ続けるというアンティークな現存の頭足類です。絶滅したアンモナイトも同じように螺旋状の貝殻の構造をもち、美術界ではこの曲線に『フィボナッチ数列』が隠されていると言われますが、同じような構造を持っていて、この空洞を利用してジェットのように水を吐き出しながら前へと泳ぎ進みます。(黄金比・フィボナッチ数列に関しては後述予定。)
珊瑚礁の海にしか生息しておらず、大変貴重な存在とも言われています。「水中をスイスイ泳ぐ貝」…生きている間にぜひお目にかかりたいものです。

こちらは「コウモリダコ」。別名バンパイア・スクイッド(吸血鬼イカ)と言われジュラ紀を生き伸びた、現存する生きた化石。和名がタコなのに洋名ではイカ。結果的にどちらにも所属しない「コウモリダコ科」という独立した頭足類なのであります。

このように微細にイカタコの生態を解説したこの図鑑に辿り着き、監修にご尽力された琉球大学教授のイカ博士である「池田譲教授」に出会いました。


3.イカの心を探る

「イカの心を探る」だと??え?イカに心があるの?
もうやばいですね。だいぶイカに取り憑かれ始めています。
—-
じっとこちらを見つめるイカのつぶらで大きな目。鏡に映った自分にそっと触れるイカの足……。日本人の食卓に欠かせないイカの生物学的基礎知識から、特異に発達した神経系と巨大脳まで、イカのすべてを論じる。そのユニークな行動からイカの知性の有無を問い、海の霊長類たるイカから頭足類学をあらたに提唱する。若手研究者の大胆な試み。
(書籍レビューより)

ダイオウイカの眼球は大体バレーボールくらいの大きさだと言われていますが、私たちの食卓に並ぶイカの目も、体全体の大きさと対比すれば地球上のどの生物よりも大きいと言われ、また脳の大きさも魚類の中ではダントツに大きいと解明されています。

要するに、数億年をかけて繰り返された長い進化の中で、イカは生き残るための創意工夫を重ね、頭脳・視力・擬態など、計り知れないほど多くのハイスペックを有した生き物なのです。池田教授は、この優れたイカの脳神経があれば「社会」を築く能力そして「こころ」というものさえも有しているのではないか、、と夢の溢れる仮説を元に琉球大学で日々学生とともに研究を重ねておられるそう。
要所にキュートな冗談をまじえながら、イカを愛情いっぱいに語る本書は、生命の進化や進化におけるデザインの魅力を存分に体感できる良書です。


ヤリイカの泳ぐ姿を見てきた。

最後に。去年の年末にマリンワールド海の中道(福岡)で、ヤリイカの泳ぐ姿を見てきました。池田教授がご尽力されているように、イカの飼育は魚類の中でもダントツに難しいそうです。まあ大体水族館に行ってイカやタコがいるかどうかなんてあまり気にも留めていなかったのですが、改めて水槽で泳ぐイカを見ると、水族館でイカを見れるありがたさと共に、エモーショナルな気分に包まれます。(もうもはや愛ですね)
もし水族館でヤリイカの泳ぎを見た方は、ここに注目。
「前後どっちが前かわからなくなる」

イカには前、後ろの概念が無く、縦横無尽に前後に泳ぐことができるのです。(よ〜く考えて。イカれてるでしょ。)
そして、その皮膚の表面は光を感知して七色に美しく輝く斑点模様。お皿の上でみるイカの概念を覆す美しさです。
生き物の進化はデザインされているのだな〜。と目前で体感できるイカ水槽。ぜひ一度イカの沼にハマってみてください。海水やけど。


(ダイオウイカの模型に大興奮の私。)


進化とは、淘汰とは、美とは、デザインとは…!
いろんな思索の大冒険に出会えると思います!
それではまた、生物大冒険の旅でお会いしましょう〜。

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