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良いデザイン10ヶ条(その3)

2024.07.18

こんにちは!アルジュナのアートディレクター、樹世です。
私たちアルジュナがリスペクトしているディーター・ラムス氏による「良いデザイン10ヶ条」に学び、心がけている事を書いています。今回は第3条。

(良いデザイン10箇条・第2条の記事はこちら。)


3. Good design is aesthetic.
良いデザインは、美的である。
製品の審美的側面は、製品の有用性と不可分である。
なぜなら、毎日使う製品は、私達の快適な暮らしを左右するからだ。
しかし、美しさを持ちうるのは、うまく考えられたものだけだ。


…英語の直訳で読むと少し解釈が難しかったので、自分なりに要約してみるとこうなりました。
「良いデザインには審美眼による美しさが必要不可欠。
とくに日常的に使うものであればあるほど、心理的な面での美しさを兼ね備えたものが長く愛される。 古来より美しいものは心を豊かにし、感動を与える。そのように美しさについて深く考え、製品に昇華されたものが良いデザインである。」


以下、馴染みの薄い言葉の意味も調べてみることで少しずつ内容が明るくなりました。
——
[語意]
※Aesthetic…美的な,審美的な,美しい,審美眼のある
(”Beauty”は視覚的な魅力に対する感情的・直感的な反応に焦点を当てているのに対し、”Aesthetics”は美しさの背後にある理論を分析的にアプローチしている)

※不可分…分けようにも分けられないほど、密接に結びついていること。
——-

前回はデザインの「有用性」についてお話をしましたが、今回の審美性が対として位置づけられているようです。その意味あいとして「不可分」という言葉が当てられています。有用性と審美性は分けようにも分けることができない上、両方が紙の裏と表のように密接に関わり合っているということですね。
ただ美しい、と感じるものを主観的に表現するものは芸術に近いアプローチですが、美しさを理論的に考える、これがデザインにおける美のアプローチということでしょうか。…なかなか高度ですね!

わたしたちデザイナーは、プロとしてどのような心得が必要なのでしょうか。
まず、優れたデザインを見る際に、「美しさ」の奥にどのような思想や理論が隠されているのか、紐といていく姿勢が大事なのかもしれません。ただキレイ、かっこいい、という表層だけで捉えるのではなく、作り手の頭の中に入っていって考え方を学んでいきたいものです。

有用性と審美性を兼ねたものとして、日本を代表する美しいデザインを思い出しました。「庭」という機能を侘び寂びという心の感動までに昇華した古来の文化「枯山水」。
京都に住んでいた頃、折に触れ訪れていた建仁寺の庭園に「●▲■乃庭」という小さな中庭があります。


良く見ないと見つけるのが難しいのですが、中央に水の波紋のような模様が描かれた植え込み、これが●。手前の方に直角三角形の形に描かれた部分が▲、奥の井戸の形が■、とデザインされているそうです。「●▲■」とは、宇宙の根源的形態を示し、密教の6大思想(地水火風空識)を、■で地、●で水、▲で火を表しているそうです。

建築の中にこれほどまでに深い思想をとりいれ、眺めるという体験を通して美しさを体感させる。機能と両立した素晴らしいプロダクト。これこそ、”Aesthetic”のデザインです。
日常のあらゆる場所に点在する、素晴らしいデザインを眺め、審美眼を深めていきたいものですね。


ではまた次回。
次回は第4条「4. Good Desgin makes a product understandable.良いデザインは製品を分かりやすくする。」のお話です!

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