ただ、最初に言っておくと——
僕が言う“ミニマリストになりたい”は、別に家じゅうの物を全部削ぎ落として、白い部屋に無印の棚だけ置いて、みたいな話ではない。そこまでの覚悟はない(たぶん)。
どちらかというと、「生活のノイズを減らして、もっとスッキリ生きたい」っていう気持ちのほうが近い。
で、その入口として一番わかりやすかったのが、なぜか“服”だった。
僕は毎朝5時に起きて、そこから1時間しっかり風呂に入る。整えてから一日を始めるタイプだ。だから目が開いてないままクローゼットの前に立つことはない。むしろ頭は冴えてる。
冴えてるのに、服選びは面倒くさい。ここがポイント。
オシャレはしたい。これは譲れない。
でも毎朝「今日の自分をどう見せるか」を考えるのって、ちょっとした仕事みたいなものだ。仕事前にもう一仕事したくない。
だからこそ、ミニマリスト的な“迷わない仕組み”に憧れた。
ミニマリストになりたかった理由は、主にこのあたり。
まず、朝服を選ぶのが面倒くさい。
面倒くさいというより、選択する手間のコスト。
服選びって、たった数分なのに「色」「サイズ感」「気温」「予定」「気分」って地味に変数が多い。脳のメモリを使う。
そして、選んでいるようで結局いつも同じ。
タンスの手前にある“いつものやつ”をサイクルで着ている。
タンスの奥は、存在してるのに稼働してない。
「持ってるのに使ってないもの」って、ミニマリストが嫌いそうなやつだ。僕も嫌いだ。なのに増えていく。
さらにタンスを見たら、黒と白のモノトーンばかりになっていた。
これ、ある意味では整ってる。合わせやすいし失敗しない。
「ミニマリストっぽいじゃん」と思った。
思ったけど、これは“減った結果”じゃなくて“寄せた結果”だった。
ここで、僕の中でミニマリスト思想が広がっていく。
服だけじゃなくて、例えばこういうやつ。
・机の上がごちゃつくと集中が途切れる
・物が多いと、掃除も片付けも腰が重くなる
・収納を増やすより、持ち物を減らしたほうが話が早い気がする
・どこに何があるか探す時間が、地味に人生を削ってくる
要は「物が多い=悪」っていうより、“物が多いせいで、手間と迷いが増える”のが嫌なんだと思う。
なのに。なぜか服だけは減らない。むしろ増える。なぜ。
なれなかった理由その1。
定期的に物欲が出て洋服を買ってしまう。
ここが一番しょうもないけど一番リアルだ。
「これは使える」
「黒だし万能」
「素材が違うから別枠」
「このデザイン素敵」
この“必要のような欲しい”が、強い。
しかも買うのは、だいたい似たような服。
黒のトップス、黒のパンツ、白っぽいシャツ。
バリエーションが増えたはずなのに、結局「同じゾーン」で増殖していく。
ミニマリストに近づいてるつもりで、遠ざかってる。
なれなかった理由その2。
奥さんに「同じようなのばかり買ってもったいない」と言われる。
これは正論パンチ。
僕が「見て、これ良くない?」とテンション高めに見せた服を、奥さんは一瞬で“既視感”として処理する。
「また同じようなの」
この一言で、僕の中の新鮮さが蒸発する。
反論はできる。でも苦しい。
「いや、丈が違う」
「素材が違う」
「シルエットが違う」
言えば言うほど、自分でも「それ、誰が気づくの?」ってなっていく。
奥さんの言う通り、だいたい同じ。だからもったいない。
ここまで書いて気づくのは、僕がミニマリストになれないのは「服が好きだから」なんだと思う。
オシャレしたい。気分を変えたい。新しいものにワクワクしたい。
その気持ちは、便利さや合理性とは別の場所にある。
だから、完全なミニマリストはたぶん無理だ。
でも、じゃあ全部諦めるかというと、それも違う。
最近はこう考えるようにしている。
ミニマリストになれないなら、せめて“ミニマリスト的に考える”だけでもやろう、と。
例えば服なら、
・「黒だから使える」で買ってない?(黒は免罪符じゃない)
・買うなら1枚手放せる?(増やすなら減らす)
・タンス手前リーグだけが回ってない?(稼働率で見る)
・似た服を買ったら、手元の似た服は役目終了じゃない?(引退させる)
服以外でも、
・使ってない物は“持ってる”じゃなくて“眠ってる”
・収納を増やす前に、まず減らす
・探す時間が発生する物は、生活のどこかで邪魔している
こういう発想を入れるだけで、ほんの少しだけ暮らしが軽くなる気がする。
ミニマリストになりたかった。
でも、なれなかった。
ただ、そのおかげで分かったことがある。
僕が本当に欲しいのは「物が少ない生活」じゃなくて、“整っていて、迷いが少ない生活”なんだと思う。
そして僕は、整えるために黒を買いがちな人間なんだと思う。
ミニマリストにはなれなくてもいい。
でも、これ以上“同じような服”が増えていかないように。
せめて、選びやすくて、気分が上がるクローゼットにしたい。
次こそ。たぶん。きっと。たぶん。
