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アイデアの引き出し(インプット編)

アイデアの引き出し(インプット編)

こんにちは、アルジュナの牛島樹世です。

最近、高校生やデザインの専門学校の学生さん達に「デザインのアイデアが出てこない時、どうしたら良いですか?」というような質問を受けることがよくあります。

作るときのコツ、といえば何だろうと改めて考えると沢山ありますが、製作に取りかかる前に、頭の中では色々なことが起きています。まずは、思考するときのフローを順序立てて書いてみることにしました。

 

 

アイデアのヒントは言葉から

 

アイデアの種がゼロの状態でビジュアルを生み出すことは不可能ですので、まずはヒントを見つける空想の旅にでます!

 

常日頃、妄想や空想にばかり浸っているので、特別にストックの時間、というようなことは意識していません。というのは、24時間目が開いている時間は常に何かを見ているわけですから、目に入るものは全て新しい情報だと捉えています。

仕事場と家との往復しかない日常でさえ、目に入るもの、耳に入る音、頭に浮かぶ妄想や過去の記憶も大事なアイデアの種。

ビジュアルに関しては写真やスクショで保存。

それよりもストックが多いのが意外に「言葉」の方だなと気づきました。

「美しい言葉」「感情がざわつくことば」「表現にぴったりの言葉」「語呂のいい造語」「オノマトペ」「音楽を感じることば」など、どんなジャンルも思いついたらスマホのメモピピッとメモ。そしたら気になってすぐに調べたり動画を見たくなってしまうので時間がいくらあっても足りないほど遊んでいます。

 

ある日のメモの一部

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スティグマ(聖痕 – イエスが磔刑となった際についた傷。)

逆境(反意語:順境)

シグナル(意味:信号や合図→語源はsign

黒字体質(反:赤字体質)

数息観(座禅の呼吸法)

ピーキー(限られた範囲内でのみ、高性能を発揮する奴

点と線が繫がり面になり多面体に変化する→1次元から高次元への変容

ハイヤーセルフ

スモールコンボのジャグバンド

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…このようにメモを見返すと関連性のないワードが雑多に並んでます。その時々でこの言葉は近い未来のアイデアソースになるぞ!とワクワクするのですが、特に使う場面といっても友達や打ち合わせ時の雑談くらい、なんですけどね!でも、ストックという行為が大事。自分の「言葉引き出し」に大事にしまっておきましょう。いつかは役に立つはずです。

 

 

「〜ぽい」「〜みたいな」を見つける

 

最後にアウトプットされたデザインが、商品やブランドとしての役割を果たす。それは「そのものらしく、ふさわしい」佇まいであることです。その相応しい姿を生見出すため、手始めに「〜ぽい」という抽象表現を書き出します。ようするに、「〜ぽい」という抽象性はそのままに、言葉で誰にでも伝わる言葉に編纂する、という作業です。

例として最近製作に携わったお茶のパッケージの案件をご紹介します。

 

「東そのぎ・おのうえ茶園さまのパッケージ5種」

地元の道の駅限定で販売することが決まっていたので、売り場のコアターゲットを意識することが大事です。それから、ライバル商品が多数並ぶ中、ひときわ目を引くデザインにしたいというリクエストでしたので、存在感を出せるよう心掛けました。

まず、売り場では「お茶の葉っぱ」をモチーフにしたグリーンのパッケージが圧倒的に多い。かといってお茶をイメージできないビジュアルだと「お茶らしさ」が表現できません。そこでヒントにしたのが「湯気」です。

お茶の湯気にはそれぞれの茶葉がふんわりと薫ります。そのふわっとした香りをパッケージ全体に漂わせることにしました。

まず、ここで言葉の羅列。

 

湯気/漂う/香りをまとう/急須に張る霜/香ばしい/燻す/空気と混ざる/裸眼でみたような茶畑/ざらっとしたテクスチャの抽象画/湿度/じめじめ/しっとり/ほかほか/ふわふわ…

 

ここまでで結構頭にイメージできるビジュアルが見えてきましたよ。
ここまできたらこの先は、頭に浮かんだ言葉と映像のリンクを行うためのザッピング(※)を行います。

 

※パチパチとテレビのチャンネルを変えるように無心で画だけを見続けること

そこでピンときた画像をできるだけ多く、できるだけ何も考えず、保存していきます。


「茶葉の香りをまとった湯気」「裸眼でみたような茶畑の景色」とマッチする映像がほぼ頭のなかで完成。
このあとは具体的に商品の特徴に合わせてデザインを組み立てていきます。

出来上がったスタンドチャック式のお茶パッケージ、4種類。
毎日誰でも気軽に飲んでいただけるよう、使いやすいティーバックをたっぷり詰めました。

包材のこだわりは、アルミ袋の銀色を上手く生かし、それぞれのカラーに合わせたメタリック色を表現。
箔押しのような輝きが出ました。
香気漂うグラフィックの中に、しっかりとお茶の種類とONOUEさんのブランド名を明記。
分かり易くて使いやすい、売り場でひときわ存在感を放つデザインが出来上がり!

 

頭の中で完成するまでイラレを触らない

 

このように、

・ことばの羅列

・ことばとことばの算数(かけ算、足し算)

・ことばと映像のリンク

・〜っぽい世界感の形成

というプロセスを踏んでいくことで、頭のなかでイメージは完成します。

 

「よし、できたぞ!あとはスケッチをして、版下を作るだけで大丈夫だ!」
となれば完成も間近。

 

イラレの前で何時間も手が止まってデザインが進まない、、というデザイナーさんもいるし、イラレの機能に頼ってなんとなくの画を描いてしまう学生さんもいるなかで私がいつも言っているのは、「イラレを触る前に頭の中で旅をしよう!」ということです。
コンピューターでデザインをするのが当たり前の時代だからこそ、構想や設計の段階は出来るだけ手を動かして創作の脳を活発に使いたいものですね!

デザインには「機能と情緒」の調和が大切だと常々言っているのですが、その情緒の部分を作るプロセスというのは、ほとんどが頭のなかで構成されていくものだと思っています。

日本語って、「言霊」という言葉があるくらい、無限の可能性を秘めていますよね。
言葉の力を頼って、五感に響いてくる、素敵なデザインをこれからもみなさんが生み出していけますように!