こんにちは!いよいよ冬らしい季節になってきましたね。
アルジュナの樹世です!
「イラレを触る前に手をうごかす!」というのが、最近は口癖のようになってきましたが、実際にどんなことをやっているのか、お話しようかなと思います。
今日は、パッケージのトーン&マナーを策定するために行った、自主制作について書いてみます。
クライアントは「梅月堂」さんという、長崎で130年続く老舗のお菓子屋さんです。
30年以上変わらなかった全ての商品の包装紙材を刷新する計画中です。
手先から伝わっていくもの
現在で4代目を引き継ぐ社長さんとの2年にわたる会話の中で、折に触れ出てきた言葉は「味わい」。
明治から大正、昭和、平成、令和と5つの時代をまたいで今も変わらない手作りのお菓子。焼きたてのバターの味、香り。脳裏に残る「記憶」をデザインで再現できないかとずっと考えていました。
もうひとつ、私がパッケージに取り組む際に注力したかったことは、「まるで、ずっと前から変わってないような佇まい」を表現すること。
これは私がいつも課題にしていることです。
ガラッとデザインが変わったのに、お客様にとっては「前からこれだったよね?」と言ってもらえるような、さりげない仕上がりにしたい。
デザインは側にそっと添えられただけに見えるけど、ブランドの全体像を底上げする「そこぢから」でありたい。
デザイン自体は抽象的な方が良いと判断したのですが、それを具現化するのが難しい。
そこで、感覚をつかむために今回取り組んでみたのは「ちぎり絵」。
色紙を破ったり貼ったりしながら味を表現することに挑戦。
ちぎって、ちぎって、貼って、はがして‥。(「キヨさんまた何か工作始めたぞ、ザワザワ。」)
ちぎり絵に没頭すること数日…。
できあがった絵は、一枚でも美しく見える様に構成しました。
まずはこんがりバターの味、シンプルで優しいマドレーヌ。
長崎のレモンをたっぷり使ったレモンケーキ
手作りならではの優しい食感、アップルパイ。
春の節句のお菓子、桃カステラ
長崎定番のショートケーキ「シースクリーム」
マドレーヌやレモンケーキなど、焼き菓子の不器用なかわいさ、おいしさを検証してみたり、
ちぎり絵を製作しながら全体のトーン&マナーを検証していったりしました。
包材の印刷工程を予測して、全て2色で展開することを想定。白を含めると3色で表現することになります。
この「3色」という縛りのなかで、それぞれの商品のおいしさと特徴、そして手にとりたいと思わせる存在感を、単色を使い表現していきました。
このようにして、味と記憶を色紙で形作っていく時間の中で、
ふと感じたことがありました。
それは、
「ケーキ職人も、デザインの職人も、同じだな〜」
ということ。
ひとつひとつ、思いをこめて丁寧に作り、お客さんの手に渡っていく時間に思いを馳せながら作業をする。この時間こそ、私もいちデザイナーとして大切にしていかなくちゃいけないなと体感。大切な時間となりました。
仕上がりから感じる「記憶」
切り絵から展開したデザインは、まずお店の顔となる包装紙へ変身。
以前使用していたものと同じ印刷工程を踏むことを条件に、金1色で表現しました。
1色刷りという制限の中で
・「味の記憶」を感じるデザインにすること
・「昔から変わらない」と思わせるレトロさ
このふたつを貫き、クライアントさんと何度もラリーを重ねて出来上がりました。
今後はカラフルなレモンケーキやマドレーヌなど、他の商品も出来上がっていく予定です。
完成したらまたご紹介したいと思います!
ではまた次回。