勝ったばーい!!!(by馬場雄大)
長崎ヴェルカの優勝から、2日が経ちました。
まずは、長崎ヴェルカの皆さま、Bリーグチャンピオンシップ優勝、本当におめでとうございます!
CS最終戦は打ち合わせを終わらせて足早に帰り、相棒笹田くんの家族と共に観戦。
前半は長崎ヴェルカがリードしながらも、後半になると琉球ゴールデンキングスがじわじわと追い上げてくる展開。最後までまったく気の抜けない、手に汗握る試合。
その一つひとつのプレーに込められた緊張感や、選手たちの集中力、会場全体の熱量は画面越しにも強く伝わってきました。
まさに決勝戦らしく素晴らしい試合で、試合終了の瞬間は感動で胸がいっぱいでした。泣いた〜!
デザインもまた、チームの一員として。
私自身は、スラムダンク全盛世代。高校時代は母校のバスケ部が結構強くて、高校総体の応援に熱が入っていた思い出があります。
だけどバスケットボールの戦術や選手の細かな活躍を語れるほど、競技に詳しいわけではありません。
だから今回の記事では、試合内容や選手個人のプレーについてはあえて触れず、私たちアルジュナがデザインを通じてどのように長崎ヴェルカに関わってきたのかを、少し個人的な視点から書いてみたいと思います!
長崎の新しい顔として生まれたチーム
長崎ヴェルカは、2020年に長崎で誕生したプロバスケットボールクラブです。
クラブ創設後、B3リーグへ参入すると、初年度から優勝を果たし、B2へ昇格。さらに翌シーズンにはB2で準優勝し、創設からわずか数年でB1の舞台へと駆け上がっていきました。

▲2011-2022年シーズン時。B3リーグ優勝+B2リーグへ最速で昇格。
その歩みは、単にチームの戦績だけで語れるものではありません。選手やスタッフの編成、クラブ運営、ファンコミュニティの形成、そして長崎スタジアムシティや新ホームアリーナの誕生など、クラブを取り巻くさまざまなプロジェクトが同時に進んでいきました。
長崎ヴェルカは、競技チームであると同時に、長崎という街の未来を象徴するプロジェクトでもあったのだと思います。

▲2025年にオープンしたホーム競技場「ハピネスアリーナ」。巨大なヴェルカバードが目を引きます。
発足当時の不安と、オンラインでのプレゼン
2020年の暮れ、私たちアルジュナは、そのクラブ発足時にロゴマーク、シンボルマーク、ブランドカラー、そして背番号や選手名、アリーナ内の表示などに使用されるオリジナルフォントのデザインを提案しました。

いま振り返ると、発足当時の長崎ヴェルカは、まだBリーグにも参入していないチームでした。しかも時期はコロナ禍の真っ只中。打ち合わせやプレゼンテーションもオンラインが中心で、チームの空気を直接感じる機会は限られていました。
本当にこのデザインが、これから生まれるチームの顔になれるのだろうか。
長崎の人たちに受け入れられるのだろうか。
アリーナで、ユニフォームで、画面の中で、きちんと力を持つものになるのだろうか。
当時は、期待と同じくらい不安もありました。
ロゴだけで終わらせないためのVI計画
発足当時、長崎ヴェルカのプロジェクトは、ロゴマークのみの公募として始まりました。
しかし、スポーツチームのブランドは、ロゴだけで完結するものではありません。ユニフォーム、背番号、選手名、競技場、販促物、グッズ、アパレル、映像、Web…。チームが成長すればするほど、その視覚表現はさまざまな場所へ広がっていきます。
そこで私たちは、ロゴマークの提案に加えて、レギュラーフォント、ユニフォーム用フォント、Webフォントを含めたVI計画を同時に提案しました。

スポーツチームのブランドアイデンティティに必要なのは、何よりも「強さ」のイメージです。ロゴマークの設計に用いた60°の鋭角をベースにしながら、適宜丸みや尖りを加え、強さと個性、そしてさまざまなメディアで使われるための可読性を両立させていきました。

長崎の深い海と、静かな強さを表す「ヴェルカネイビー」
ブランドカラーには、「ヴェルカネイビー」と名付けた深い紺色を提案しました。
長崎は海に面した街です。長崎港をはじめ、街の周囲には多くの港があり、海は長崎の人々にとってとても身近な存在。ただ、そこで私たちがイメージしたのは、南国の遠浅の海のような明るいマリンブルーではありません。
長崎の海には、もっと深く、静かで、重みのある紺色の印象があります。その深い海の色を、チームの基調色として設定しました。
もうひとつのイメージは、武道で着用する「藍染めの胴衣」。

派手に強さを誇示するのではなく、静かに構え、内側に強い精神力を宿していること。クールで、凛としていて、芯があること。スポーツチームとしての力強さと、武道にも通じる精神性を、このネイビーに込めました。
「ヴェルカネイビー」は、長崎の港の深い海の色であり、同時に、強く静かなスポーツマンの精神を表す色でもあります。
街に羽ばたくことを夢見た「ヴェルカバード」
シンボルマークには、「ヴェルカバード」という名前を付けて提案しました。
デザインするうえでまず大切にしたのは、遠くから見てもアルファベットの「V」が一目で認識できることでした。アリーナの中でも、ユニフォームの上でも、街中の広告やグッズの上でも、瞬間的に長崎ヴェルカだと伝わること。その視認性を第一に考えました。
そのうえで、モチーフに選んだのが「鳥」でした。
長崎には、鳥を象徴的に扱う文化・習慣が数多くあります。
被爆地・長崎において、平和を願う象徴としての鳥。
長崎港が「鶴の港」とも呼ばれてきたこと。
そして、長崎の地形そのものが鳥のようなかたちに見えること。
鳥は、長崎という土地にとって、とても自然で、深い意味を持つモチーフだと感じていました。
同時に、バスケットボールのコート上で選手たちが跳び、走り、躍動する姿も重ねました。
長崎という土地の象徴性と、スポーツチームとしての躍動感。その両方をひとつの形にまとめたものが、ヴェルカバードです。

5年前、ロゴ発表の際に「街のあちこちにヴェルカバードが羽ばたく姿を夢見ています」とコメントしたことを、今でもよく覚えています。
当時はまだ、本当にそんな日が来るのか、はっきりと想像できていたわけではありません。
しかし今、長崎の街を歩けば、ラッピングカーや電車、ポスター、Tシャツ、ウェア、バッグ、さまざまな場所にヴェルカバードの姿を見かけます。アリーナの中だけでなく、街の風景の中に、日常の中に、ヴェルカバードが確かに羽ばたいている。
5年前に夢見ていた景色が、今、本当に長崎のあちこちに広がっています。

チームが街に浸透していく姿を見て
それから数年、長崎ヴェルカは着実に勝利を重ね、B3からB2へ、そしてB1へと駆け上がっていきました。
チームの存在は、私の住む長崎の街の中にも少しずつ浸透していきました。
最初は一部の人たちの熱量だったものが、やがて街の話題になり、日常の景色の中にヴェルカの存在が増えていく。その変化を、私も一人の長崎県民として見てきました。
ロゴやカラー、フォントは、発表された瞬間に完成するものではありません。
使われ、見られ、応援され、愛され、街の中に少しずつ広がっていくことで、ようやく本当の意味でチームのものになっていくのだと思います。
スコアボードに刻まれた数字、背番号、選手名
この数年間、数々の試合を見ながら、私が強く目を奪われたのは、選手たちのプレーそのものだけではありませんでした。
スコアボードに表示される数字。コートに立つ選手のユニフォームに輝く番号、そして選手名。
それらは、発足時に私たちがデザインした文字であり、数字でした。

▲ヴェルカのアリーナでは、スコアボードにもオリジナルフォントが使用されています。
(この日は私の第2の故郷でもある京都に敗退!思い出に残る試合でした。)

▲アリーナのゲート案内のアルファベットなど、あらゆる所にオリジナルフォントが使われています。
もちろん、コートで戦っているのは選手たち。勝利をつかみ取ったのは、チームの皆さんであり、応援し続けたブースターの力でもあります。
それでも、アリーナや中継の画面中で、私たちがつくったデザインが選手とともに映り、ファンの皆さんの目に触れ、歓声の中で輝いているのを見たとき、デザインもまた、チームの一員としてそこに立っているように感じていました。
コンセプトが現実の風景になった日
発足当時に掲げたデザインコンセプトは、単なるプレゼン上の言葉ではなく、数年後の未来をイメージしながら展開していったものでした。
ヴェルカネイビーは、ユニフォームやアリーナの空気となり、長崎の深い海と静かな強さをまといました。
ヴェルカバードは、街のあちこちに羽ばたき、チームと長崎をつなぐシンボルとして育っていきました。
そしてオリジナルフォントは、選手の名前や背番号、スコアボードの数字となり、勝利の瞬間を刻む文字になりました。
ロゴやフォントは、声を出すことも、シュートを決めることもできません。
けれど、選手の背中に宿り、スコアに刻まれ、アリーナの空気をつくり、画面越しに応援する人たちの記憶に残ることはできます。
その意味で、私たちもデザインというかたちで、長崎ヴェルカの一人の選手として、陰ながらこのチームと一緒に戦うことができたのかもしれません。
5年前にコンセプトとして描いていたものが、現実のチームの格好良さや強さ、憧れへとつながっていったことを、今回の優勝を通じてあらためて噛みしめています。
有言実行。
昨日の長崎新聞は、ヴェルカバードで溢れていました。

MVPを受賞した5番、イ・ヒョンジュン選手の写真とともに、大きく掲げられた「有言実行」の見出し。
その紙面を見たとき、5年前にロゴ発表でコメントした言葉を思い出しました。
「街のあちこちにヴェルカバードが羽ばたく姿を夢見ています」
あのとき夢見ていた景色は、今、長崎の街に、アリーナに、ユニフォームに、そして新聞の紙面に広がっています。
発足して間もないチームでありながら、ここまでの物語を見せてくれた長崎ヴェルカ。
これからも長崎がバスケットボールで盛り上がり、街の中にさらにヴェルカの景色が広がっていくことを楽しみにしています。
そして次のシーズンも、素晴らしい試合と勝利を、デザインの一端に関わった一人として、そして長崎に暮らす一人として、心から応援しています。
長崎ヴェルカ、Bリーグチャンピオンシップ優勝、本当におめでとうございます!
そして、このチームのはじまりに関わらせていただいたことを、心から誇りに思います。
試合の詳細はこちら!【(C)B.LEAGUE】
https://www.bleague.jp/bmagazine/detail/id=613763
