こんにちは!
世界一でっかいロゴを作ることを夢見ている、アルジュナのアートディレクター
樹世です。
先日、アルテミスⅡが打ち上げられ、4名の宇宙飛行士が約10日間かけて月を周回し帰還しました。50年ぶりに月に旅立った地球人。
そして人類が初めて目にした月の裏側。ロマン溢れる宇宙体験を楽しんだ方も多いのではないでしょうか。
しかしNASAのロゴ、かっこいいですよね。でっかいですもんね。
私も大好きです。
ところで、みなさん、NASAのロゴってどんなデザインか思い出せますか?
・青い丸に星が飛んでて、赤い流れ星が、、だっけ?
・白地にまっ赤な線でNASAの文字だけ描いてある、、だっけ?
もしかして人によって頭に浮かんだデザインが違う、そう思いませんか?
そうなんです。
..2つある?なんてことだ!

ロゴ1:通称「ミートボール」
1959年にNASAグレンリサーチセンターのジェームズ・モダレッリによってデザインされました。
赤・青・白の3色で構成され、惑星、星、軌道、航空全般を表現しています。

ロゴ2:通称「ワーム」
1974年、ニューヨークのデザインスタジオ「Danne & Blackburn」の創業者リチャード・ダンとブルース・ブラックバーンによってリニューアルされました。
真っ赤なラインでシンプルに描いた、新しい時代を象徴する洗練されたデザインです。
……しかし、リニューアルが行われたにも関わらず、どちらともハッキリしないのはなぜ?
ひとまず、SF映画で検証。

ODESSEY(オデッセイ)のジェシカ・チャステイン。
右肩のワッペン、しっかりとミートボールですね。

こちらはムーン・フォールより。
ユニフォームにしっかりとミートボールのワッペンが輝いております。

インターステラーのクーパーとブライト博士。
ん?これはよく見たら、、
ワームに近い方を使っていますがちょっと違うようです。笑。
実物のアルテミス2を検証。

おお?
おお!


オーマイガ!ロゴが2つともある!!なんてことだ..。
なぜこのようなことになっているのでしょうか?
デザイナーに愛され、NASAに捨てられた
NASAは、1974年に「ミートボール」ロゴから新たにリニューアルする計画を立てました。
それには「連邦グラフィックス向上計画」という政策の背景があります。
この政策には、それまでの規範のないデザインを改め、あらゆる媒体に一貫したデザインを適用して、効率的かつ先進的なイメージを構築しようという意図がありました。
デザイナーのリチャード・ダナー&ブルース・ブラックバーンは、NASAの4文字のみを用い、革新的で機能美に優れたワームロゴを構築。
さらにこの新ロゴ「ワーム」には、細やかな規定をまとめた90ページに及ぶガイドラインが作成されました。
まさに今の時代に私たちが模範とするCIの先駆けです。





美しすぎるワームロゴのガイドライン。
復刻版が発行され、実際に手に取ることもできるらしいです。
https://store.bookandsons.com/?pid=127842961
ワームロゴはデザイン界ではとても評判が良く、後のデザイナーの道しるべとなりました。
しかし、前のロゴに対する職員の愛着が予想以上に大きく、ここからワームロゴは不遇の道をたどることになります。
ロゴ変更が公式に発表される前に、ワームロゴの施されたステーショナリーセットがNASA傘下の各センターへ送られてしまったのです。
何も知らされていないNASAの職員達は、見覚えのないデザインに困惑しました。
長年の間親しんできた「ミートボール」が知らぬ間に変更されたことで、職員たちは不信感を持ってしまい、
社内で「ミートボール派」と「ワーム派」の派閥が生まれ騒動になるほどの論争が広がったのです。
組織内でブランド戦略を共有するというような、今では当たり前のことが当時は定着していなかったのでしょうが、それにしても残念な失敗です。
肉団子VSミミズ!
「ワーム(worm)」とは他ならず「ミミズ」のこと。
ミートボール派:「こんなもの、ミミズの這った文字だ!」
ワーム派:「余計な物をごちゃごちゃ丸めた、肉団子め!」
…そんな言い争いが聞こえてくるようです。
(いかにもアメリカのジョークって感じがしますね。)
それで、どうなったかというと、結局は1974年から18年、反対派を残したままワームロゴが使用されることになりました。
(莫大な予算をかけたことでしょうから、、。)
なので、ちょうど1970年代生まれの同世代にとってはこの時代のワームロゴに馴染みがあるわけです。
ミートボールの逆襲
1992年NASAの新しい長官になったダニエル・ゴールディンが、なんと再びミートボールに戻すことを決定したのです。
ゴールディンは新しい役職に就くにあたり、NASA本部を視察し、自分が責任者である間に従業員の士気を向上させるために何ができるかを尋ねました。
NASAのラングレー研究センターの所長は、ゴールディンにミミズを追い出してミートボールを復活させるよう勧めました。
年配のNASA職員たちからとにかく不評だったワームはこのようにして奇しくも去ることを強いられてしまったのです。
10年の歳月をかけて作製された90ページの重厚なマニュアルとともに、CI向上を目指したワームロゴはNASAを去ることになりました。
それ以来、NASAはミートボールを公式ロゴとして使用しています。
2016年に公開された、デザイナーのブルース・ブラックバーン氏を追いかけた短編ドキュメンタリー映画「Blackburn」。Blackburn – HCASでは、NASAロゴの一連のストーリーが描かれています。
他にも、代表作として「アメリカ独立戦争200周年記念シンボル」などもデザインし、NASAと並び素晴らしい功績を残しました。
ブラックバーン氏は2021年2月1日に82歳でこの世を去りました。
アメリカらしい、素晴らしいデザインです。
2020年には、ワームロゴは再び復活し、ミートボールロゴと並んでよく使われています。
公式ではないにせよ、使いやすく視認性の高いこのロゴは様々なシーンで目にすることができます。
拡張性の高さが再認識された証ですね。
そのためきっと私たちはNASAのロゴは二つある、というイメージを持っているのだと思います。

今年公開された最新のSF映画「プロジェクト・フェイルメアリー」のライアン・ゴズリングの服にも2つのロゴが付いていました!
結局、「オフィシャル」に決着がついたものの、二つが仲良く並んで使われているのです。
世界に名を馳せるブランドでは異例だけど、こうやって歴史を紐解くと、どちらも 等しく愛されていることが伝わってきます。
機能美を追求したロゴが理解されなかった時代
今の私たちにとって、「グラフィックデザイナー」という職能は、社会的な位置づけとしてすでにきちんと組み込まれているように思います。
しかし、その道を築いて行くまでにどのような苦労があったのでしょうか。
60年にわたってロゴデザインの歴史を築きあげた“ロゴ界のゴットファーザー”、チェーマイエフ&ガイズマー&ハビブ(CGH)というデザイナーが、あるインタビューで1950年代後半の時代をこのように語っています。
「デザインが存在しなかったわけではない。だが、たとえばタクシードライバーに“お兄さん、なにやってる人なの?”と聞かれ、グラフィックデザイナーだ、と答えたところで1時間は説明が必要。そんな時代だった」
「ロゴにトレンドなど無い」世界的企業の”顔”を60年つくり続けるデザイン事務所が知る〈ロゴの髄〉
私たちの時代、CIという言葉やガイドラインの運用も一般的になりました。日本でもほとんどの企業が「ロゴ」に対して経営改善の策になると期待しているし、私も毎日そのようなことを考えながら仕事をしています。
しかし、デザイナーが社会にとって何の役に立つのかを理解してもらえる時代はずっと来なかった。
このような話を聞けば聴くほど、長い変遷を経て大変な苦労をされたデザイナーが過去に多く活躍されてきたことを知ることができます。先人が引いてくれたレールの上で私たちはデザインをやっている。それをちゃんと知らないといけないのです。
好き嫌いでは計れないロゴの世界
ミートボールには夢がある。
でも、ワームには未来があった。
50年近くの時を経て、2つのロゴはそれぞれの役割を果たしている。私はそう思います。
宇宙へ旅立つ巨大なスペースシャトルには、太いラインで描かれたシンプルな4文字がちょうどいい。遠くからでも見えるサイズで配置できる、横長のロゴが最適だったのだと思います。ワームには、使いやすく、分かりやすく、大きく、太く機能するという価値がありました。
ミートボールには、人類が宇宙へ旅立ちはじめた最初のストーリーが描かれています。
そこには未来への夢が詰まっています。
どちらも必要です。
でも、その2つが正しく理解され、愛されるように。
みんなに伝わるようにしないといけない。
ロゴの世界は、好き嫌いだけでは語れないのだから。
デザインは進化する。時代は一緒には進化しない。
だから、作るだけではなく、伝える力も養っていこうと思います。
今日はそんな、大好きなロゴのお話でした‼
いやしかし、NASAのロゴ67年も使ってるんですね。
そろそろリニューアルをお考えでしたら、ぜひご一報ください!
Please commission me!
