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なぜ、あのブランドは選ばれるのか?認知バイアスとブランディングの関係

なぜ、あのブランドは選ばれるのか?認知バイアスとブランディングの関係

みなさんが、駅でふと見かけるポスター。
運転中、信号待ちで何となく眺めている看板。

そのときは特に意識していなくても、同じ会社や商品の名前を何度も目にするうちに、いつの間にか親しみや安心感を抱いていることがあります。

ブランディングにおけるさまざまな施策には、実は「認知バイアス」がうまく活用されています。
優れたブランディングを支えているのは、単にカッコいい、かわいいクリエイティブだけではありません。
人間の「脳の癖」を理解し、それを生かすことで、ブランドが持つ魅力や価値を伝わりやすくしているのです。
今回は、そんな認知バイアスとブランディングの関係について書いていきたいと思います。

 

 

認知バイアスとはなんぞや?

まずは、認知バイアスについて。
端的に言うと、認知バイアスとは、過去の経験や直感、そのときの感情などの影響によって、判断が一定の方向へ偏る傾向のことです。

人間の脳が複雑な情報を素早く処理するために使う「思考の近道」ともいえます。
この分野で非常に有名なのが、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者、ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』です。
カーネマンは、人間の思考を大きく2つのシステムに分けて説明しました。
ひとつは、直感的かつ自動的に素早く判断する「システム1」。
もうひとつは、時間をかけて論理的に考える「システム2」です。
この考え方は非常に興味深いものです。

もし、日常生活で起こるすべての出来事をシステム2でじっくり考えていたら、僕たちの生活には支障が出まくります。
例えば、前から自転車が来たとき。
自動販売機で缶コーヒーを買うとき。
車で交差点に入るとき。
毎朝、歯を磨くとき。

僕たちは、そのたびに一から情報を分析しているわけではありません。これまでの経験をもとに、システム1によって素早く判断しています。

もちろん、直感的な判断のすべてが認知バイアスというわけではありません。
ただし、こうした思考の近道によって、特定の情報を重視したり、実際以上に魅力的だと感じたりすることがあります。

マーケティングやブランディングの世界では、このような人間の思考の特性を分析し、さまざまな手法に活用しています。

 

 

ブランドと認知バイアスの関連性

勘のいい人は、もうピンと来たかもしれません。
日頃、僕たちが選んでいる商品やサービスにも、さまざまな認知バイアスが働いています。
人は何かを購入するとき、「自分の意思で決めた」と考えているはずです。
もちろん、最終的に選択するのは自分自身です。
しかし、その判断は完全にゼロの状態から生まれるわけではありません。
普段の生活で目にしてきた広告、過去の経験、周囲の評判、憧れている人の行動など、多くの情報が判断に影響しています。

例えば、
好きなタレントがCMに出演している。
憧れの人がその商品を使っている。
最近よく見かける形の服だから気になる。
環境に配慮している企業だから応援したい。
こうした印象も、ブランドがつくる体験の一部である場合がほとんどです。

ある意味では「さまざまな影響を受けたうえでの、自分の意思」といえるかもしれません。
とはいえ、人の意思は、広告を一度見せただけで簡単に変えられるものではありません。
企業の発信、商品の品質、利用したときの体験、周囲からの評判などが長い時間をかけて積み重なり、少しずつブランドに対する印象がつくられていきます。

ブランディングが、よく「物語」に例えられるのもそのためです。
一回限りの派手な広告ではなく、長く一貫したブランドストーリーを構築することで、認知バイアスを味方につけていくことが重要です。

 

 

ブランディングに働く認知バイアス

続いては、ブランディングに関係する代表的な認知バイアスについて書きたいと思います。

単純接触効果(ザイアンス効果)

非常に有名で、ブランディングとの関係も深い心理効果です。
名前のとおり、何度も接触するものに対して、親しみや好意を感じやすくなる現象を指します。
通勤中に看板を見て、テレビCMで見て、Web広告で見て、SNSでも見かける。非常に有名で、ブランディングとの関係も深い心理効果です。
名前のとおり、何度も接触するものに対して、親しみや好意を感じやすくなる現象を指します。
通勤中に看板を見て、テレビCMで見て、Web広告で見て、SNSでも見かける。

さまざまな場所で同じ商品や会社に接触するうちに、知らない企業から「何となく知っている企業」へ変わっていきます。
そして、実際に商品やサービスが必要になったとき、まったく知らない企業よりも、以前から知っている企業が選択肢に入りやすくなります。
ただし、単純に接触回数を増やせばよいわけではありません。
不快な広告を何度も見せられたり、低品質なクリエイティブが繰り返し表示されたりすれば、逆に悪い印象が強化される可能性もあります。
大切なのは、好ましい体験を一貫性のある形で積み重ねることです。

 

ハロー効果

ハロー効果は「後光効果」とも呼ばれます。
目立ったひとつの特徴に引っ張られ、ほかの部分まで同じように評価してしまう傾向のことです。
例えば、デザイン性が高く、一貫したWebサイトやポスター、CMを見たとき、人は、
「きっと、この商品も品質が高いのだろう」
「この会社なら、対応もしっかりしていそうだ」
と感じることがあります。

同じような商品であっても、パッケージや広告、販売されている空間の印象によって、味や品質に対する期待まで変化する可能性があります。だからこそ、クリエイティブの質は単なる飾りではありません。
企業や商品の品質を判断する、ひとつの材料として機能しています。

 

社会的証明

社会的証明とは、多くの人が選んでいるものや支持しているものを、価値のあるものだと判断しやすくなる心理です。
例えば、
「導入実績1万件」
「Googleの口コミが400件を超え、評価は★4以上」
「多くの専門家が利用」
「利用者満足度95%」
といった情報です。社会的証明とは、多くの人が選んでいるものや支持しているものを、価値のあるものだと判断しやすくなる心理です。
初めて利用するお店やサービスについて、自分だけですべてを調べて判断するのは大変です。
そこで僕たちは、すでに利用した人の数や評価を判断材料として使います。

日本でiPhoneの利用率が高い背景にも、周囲と同じ端末を持つことへの安心感や、利用者の多さが新たな利用者を呼ぶ社会的証明が、一定程度影響している可能性があります。

ただし、その理由を社会的証明だけで説明することはできません。
使いやすさ、製品そのものの魅力、ブランドへの信頼、周辺機器やサービスとの連携など、さまざまな要因が重なっていると考えるべきでしょう。

 

希少性バイアス

希少性バイアスも、ブランディングでよく見られる心理効果です。
人は、簡単に手に入るものよりも、数量や機会が限られているものに高い価値を感じやすい傾向があります。

例えば、
「完全予約制で一日一組だけの旅館」
「職人が手作りするため、注文から納品まで数カ月かかる商品」
「期間限定の商品」
「生産数が限られたモデル」
などです。

ロレックスやランドクルーザーのように、需要に対して供給が限られ、簡単には購入できない状態が続くことで、結果として希少性がブランド価値を高めるケースもあります。

ただし、実際には十分な在庫があるのに「残りわずか」と表示するなど、存在しない希少性を演出する行為は、生活者をだますことにつながります。

希少性を伝える場合は、なぜ数量や期間が限られているのか、その理由も含めて誠実に伝えることが大切です。

 

確証バイアス

確証バイアスとは、自分がすでに持っている考えや、自分が下した判断を裏付ける情報を重視しやすくなる傾向です。
Appleは、製品を購入したあとも一貫したデザインや操作体験、製品同士の連携によって、「このブランドを選んでよかった」と感じられる環境をつくっています。

MacやiPhone、AirPodsなどを使うことで所有する満足感が高まり、さらに同じブランドの製品を選ぶ人もいます。
もちろん、Apple製品を選び続ける理由を確証バイアスだけで説明することはできません。

製品の使いやすさや性能、データの連携、ブランドへの信頼など、さまざまな要因があります。
しかし、購入後の体験によって「自分の選択は正しかった」という感覚が強化されることは、ブランドへの愛着や継続利用につながります。

一方で、確証バイアスには厄介な側面もあります。
一度「この選択は正しい」と考えると、それを肯定する情報ばかりを集め、反対する情報を無意識に軽視してしまうことがあるからです。

サンクコスト効果とコミットメントのエスカレーション

確証バイアスと関連して起こりやすいのが、「サンクコスト効果」や「コミットメントのエスカレーション」です。
すでに多くのお金や時間、労力を投じているほど、損失や失敗を認めて途中でやめることが難しくなります。

いわば、損切りができない心理状態です。
例えば、
ギャンブルで使ったお金を取り返そうとしてやめられなくなる。
進んできた道を引き返せず、さらに迷ってしまう。
失敗の兆候が出ている長期プロジェクトを中止できなくなる。
といったケースです。

確証バイアスによって都合のよい情報だけを集め、サンクコスト効果によってこれまでの投資を手放せなくなる。
これらが重なることで、間違った判断がさらに強化されることがあります。

 

 

人を操るのではなく、人を理解するために

ここまで読んでいると、

「認知バイアスって、ちょっと怖くない?」
と思う人もいるかもしれません。

僕も、最初はそう思いました(笑)。
なんだか、自分の意思を企業に操られているようで、少し気持ちが悪いなと。

実際、認知バイアスを悪用すると、生活者の意図しない選択を促す「ダークパターン」のような負のテクニックにつながります。

例えば、解約ボタンだけを見つけにくくしたり、購入を急がせるために根拠のない残り時間を表示したり、不要なオプションを最初から選択済みにしたりする手法です。

近年、消費者庁でもダークパターンの実態調査が行われ、対応や規制のあり方について議論が進められています。

ブランディングに認知バイアスの知識は必要です。

しかし、それは人を思いどおりに動かすためではありません。

商品やサービスが持つ価値を分かりやすく伝え、生活者が自分に合ったものを安心して選べるようにするために使うべきものです。

認知バイアスの本質は、「人間を理解すること」にあると僕は思います。

そしてブランディングは、自社の商品やサービス、そして生活者のことを深く理解し、その人にとって本当に良い体験をつくることが土台になければ、長くは続きません。

一時的に注目を集めたり、最初の購入を促したりすることはできるかもしれません。

しかし、商品やサービスの実態が期待に追いついていなければ、そのブランドの寿命はすぐに尽きてしまいます。

アルジュナは、人と向き合い、長く続く関係をつくっていくブランディングを目指す会社です。

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