みなさんこんにちはアルジュナのデザイナー宮﨑です。
みなさんは映画を観るとき、ポスターって気にしますか?
最近は予告広告など、動画で映画の情報が流れてくることも多いんですが
そんななかでも、僕は映画のフライヤーやポスター、パンフレットをついつい手に取ったり、買ったり、眺めたりする人種です。
そんな僕が、昔からずーっと気になっていたことがあるのですが
それは
「海外版と日本版、ポスターのデザインが違いすぎない???」
ということ。
海外版のポスターって、シンプルなのに妙にかっこいいものが多い気がするんです。
大胆な構図、絶妙な色使い、意味深なビジュアル。
そこにタイトルがポンッと置かれているだけなのに、なぜか目が離せない。
「え、なにこれ。どんな映画なんだろう?」
すべてを説明しないからこそ、想像が膨らむ。
そんな、観る前から作品の世界に引き込まれるような魅力を感じます。
一方、日本版のポスターはというと…
主演俳優の顔!
豪華キャスト!
全米No.1!
アカデミー賞受賞!
絶賛の嵐!
感動の超大作!
…ちょっと待て、情報量がすごい。
映画を観る前から、もうお腹いっぱいになりそうです。
もちろん、すべての作品がそうではありませんが、
ただ、海外版のシンプルなビジュアルに惹かれていた僕としては、日本版を見て「なんでこうなったんやろう……」と思うことが、昔からよくありました。
今回は、そんな積もりに積もってきた疑問を、デザイナー目線で考えてみたいと思います!
●実際にポスターを見比べて見てほしい。
人的に、海外版のタイトルが秀逸だなと思う作品があります。
それが『カールじいさんの空飛ぶ家』。
海外版のタイトルは、たった2文字の
「UP」。
風船で空に浮かぶ家と、シンプルに配置されたタイトル。ポスター自体もとてもシンプルで、余白の使い方が大胆です。
それだけなのに、「どんな物語が始まるんだろう?」と想像が膨らみます。
一方、日本版のポスターはというと、登場人物たちの表情や個性が見え、作品の雰囲気がより具体的に伝わってきます。
日本版は、キャラクターやストーリーの魅力を、より分かりやすく伝えようとしているように感じます。
これは『カールじいさんの空飛ぶ家』に限らず、日本版の映画ポスター全体にいえることかもしれません。
海外版は、ビジュアルとタイトルから作品の世界を想像させるものが多いのに対し、
日本版は、ある程度のあらすじやスーリーが読み取れるものが多い印象です。
さらに、キャッチコピーや出演者の名前、受賞歴など、作品への期待感を高める言葉がずらりと並ぶことも。
なんだか、作品の魅力を余すことなく伝えようと、少し保険をかけているようにも感じます。
「これだけ魅力がありますよ!」
「こんなに面白そうですよ!」
と、観る前からしっかりアピールしてくれる感じ。
もちろん、それが悪いわけではありません。作品の魅力が伝わりやすくなるし、映画を選ぶときの判断材料にもなります。
でも、個人的には、「この情報がなかったら、もっとかっこいいんじゃない?」と思ってしまうこともあります。
あえて説明しないからこそ、想像が膨らむ。
あえて見せないからこそ、気になってしまう。
すべてを伝えようとするのではなく、見る人に想像してもらう余地を残す。
その余白が、作品への興味を引き出すこともあるのかもしれません。
●なぜ日本版は情報が多くなりがちなのか?

ここまで比較してみると、ひとつの疑問が浮かびます。
そもそも、なぜ日本版のポスターには情報が多くなりがちなのでしょうか?
考えられる理由のひとつは、映画の魅力をできるだけ多くの人に伝えたい、という宣伝上の考え方です。
例えば、海外では知られている俳優でも、日本ではまだ知名度が高くないかもしれません。
映画のジャンルや見どころが、ポスターだけでは伝わりにくいこともあります。
そこで、出演者の名前やキャッチコピー、受賞歴などを加えることで、作品の魅力を伝えようとしているのではないでしょうか。
映画館でポスターを見た人に「面白そう!」「この俳優が出ているなら観てみよう!」と思ってもらうための工夫です。
つまり、情報が多いことにも、ちゃんと理由がある。
…とはいえ!
「その情報、本当に全部ポスターに必要ですか?」なんて思うところもある。
情報を足すこと自体が悪いわけではありません。
情報を足して結果的に、もともとあったビジュアルの魅力が薄れてしまったら、ちょっともったいない。
何を伝えるかと同じくらい、何を伝えないかも大切だと思います。
●日本版は、本当にダサいのか?

ここまで海外版を推してきましたが、ちょっと立ち止まって考えてみます。
そもそも、日本版のポスターは本当にダサいのでしょうか?
情報が多いことで得られるメリットも、もちろんあります。
出演者が分かりやすい。
作品のジャンルが伝わりやすい。
どんな映画なのか、観る前にイメージしやすい。
これはこれで、親切なデザインだなと思います。
そうすることで単純に広い層に浸透してマーケティングとしていい。
単純にそっちの方が興行が上がるのでしょう。
一方で、海外版のシンプルなポスターは、作品の世界観を直感的に伝えるのが得意。
どちらも、観客に映画を届けるためのデザインです。
また、日本版のポスターをつくるデザイナーだけが、自由にすべてを決めているわけではありません。
宣伝の方針や、伝えたい情報、公開する市場など、さまざまな条件、制約があるはずです。
海外版のデザインがそのまま使われることもあれば、日本の観客に向けて新たにデザインされることもあります。
そう考えると、単純に「海外版のほうがおしゃれ」「日本版はダサい」と言い切ることもできないな〜と。
ただ、個人的には、情報を加えることで作品の魅力を伝えようとするあまり、ビジュアルが本来持っていた力を弱めてしまっているケースもあるのでは、と感じます。
情報を増やすことと、伝わりやすくすることは、必ずしも同じではない。
だからこそ、何を残して、何を削るのか。その判断にデザインの面白さがあるのだと思います。
●足すデザインと、引くデザイン。
最近の映画でいうと
「バイオハザード」の「90分間逃げろ」というコピー。

作品の内容を端的に伝えながら、上映時間まで魅力として打ち出しているのが面白い。
90分間、逃げ続ける映画。
うん!分かりやすい!笑
単純に90分だからスッと見れそう〜と足を運ぶ人もいると思いますし、
映画の魅力を伝える方法って、いろいろある。
こうしたコピーも、情報を足すことで作品への興味を引き出す工夫のひとつ。
一方で、海外版のポスターに見られるような、ビジュアルとタイトルだけで惹きつける表現もある。
今回、いろいろな映画ポスターを見比べてみて、改めて感じたことがあります。
それは、デザインは情報を整理して、見た目をきれいにするだけではないということ。
何を一番伝えたいのか。
どこに目を向けてほしいのか。
見た人に、どんな気持ちになってほしいのか。
そういったことを考えながら、必要なものを選んでいく。
ときには、情報を足すことが正解かもしれません。
でも、ときには、思い切って引くことが正解かもしれません。
海外版のポスターを見て「かっこいい!」と感じるのは、単にシンプルだからではなく、限られた要素で作品の魅力を伝えているからなのかもしれません。
気になる洋画があったら、ぜひ日本版のポスターだけでなく海外版のポスターもぜひみてみてください。
それでは、また!
