みなさんこんにちは。
長崎のブランディングデザイン事務所「アルジュナ」の宮﨑です。
朝の空気がすっかり冬の匂いになってきましたね。
寒い寒いといってると、毎年のように出てくる話題があります。
「今年のクリスマスマーケット行く?」
この一言、に何故かテンションが上がる
言葉そのものに「温度」がある気がします。
キラキラ、ほかほか、わくわく。
五感全部を冬仕様に切り替えてくれる、魔法のスイッチみたいな。
ところで疑問に思いませんか?これっていつ始まったイベント?
そもそもクリスマスマーケットって、どこから来た文化なんだろう?って
●ドイツの街角で出会ったクリスマスマーケット
実はクリスマスマーケットの歴史はとても古く、
中世のドイツにまでさかのぼります。

最古の記録は 1384年のフランクフルト。
当時は「冬に備える生活必需品の市」で、今のような華やかさはゼロ。
でもそこから徐々に宗教行事と結びついていき、15世紀頃には「子どもに贈るお菓子や玩具」を売るイベントへと進化したそうです。
特に有名なのが 1434年スタートのドレスデンの「シュトリーツェルマルクト」。
なんと 580年以上の歴史 がある、現存する世界最古級のマーケット。
僕も初めてクリスマスマーケットに触れたのは
大学3年の冬、研修で訪れたドイツの街でした。

夕方、街に灯りが点き始める頃、広場の方からにぎわいが聞こえてきて、
吸い寄せられるように歩いていくと…そこはもう、別世界。
木の屋台から立ち上る湯気。
シナモンの甘い香りと、こびとくらい長いソーセージ

そして、生まれて初めて飲んだホットビール。
温かさと香り、あれは衝撃的な体験でした。
気温は、鼻から息を吸うとツンと痛いレベルの寒さ。
でも、光と温度と匂いと人のあたたかさに包まれると、
その寒ささえも「演出のひとつ」に感じるんです。
クリスマス映画の中に迷い込んだようなあの夜、
僕が学生の冬に歩いたあの広場のにじみ出る世界観は、
600年近い文化の積み重ねがつくりあげた空気のデザインだったんだなと、
いま思えばしみじみします。
●限定マグは「記憶を持ち帰る」

クリスマスマーケットといえば、やっぱり限定マグ。
キャラクターもの、地元デザイナーのデザイン、
場所によって形も柄も違うのがまた心をつかむんですよね。
しかも、その年限定、その会場限定、雨の日限定!雪の日限定!という天気ガチャまである!
という、購買意欲の三段ブースト付き。
「思い出を持って帰る」ために手に取るそんな感じに近いと思っています。
僕も例外なくマグを連れて帰りました。当時はホットビールが入っていたマグ。
家族にお土産で渡したはずですが…今も実家にあるのかは不明です(たぶん棚の奥で眠ってる)
●日本のクリスマスマーケット文化
最近は日本でもあちこちで開催されてるクリスマスマーケット。
福岡、熊本、長崎のハウステンボス、関東、関西…
ただ日本のクリスマスマーケットは
「ドイツ文化をそのまま持ってきた」わけではなく
「雰囲気をパッケージ化して、日本人の感性に合わせて再編集したもの」になっていると思います。
日本人って、季節の行事を楽しむ天才みたいなところがあって、
ハロウィンしかり、バレンタインしかり。「本場とは少し違うけど、これはこれで好き!」
という空気をつくるのがめちゃくちゃ上手い。そんな文化に対する批判の声も多いですが。
その延長線上に今の日本のクリスマスマーケットもあるんじゃないかな。
●クリスマスマーケットって何がいいの?
なぜクリスマスマーケットは経済を動かすのか?
それは結局、人の購買意欲を湧かせる「戦略」が散りばめられているから。
まず世界観の統一。
木製の屋台、オレンジの光、手描き風の文字、湯気、あたたかい飲み物、食べ物
視覚だけでなく
音(オーケストラの演奏など)・匂い・味・触感 まで
全部「同じ世界観の言語」で語られている気がします。
つまり、空間ごとブランドになっているんですよね。
ブランドを五感全部で体験する場所って、老舗の定食屋さんなどもありますが、実はそう多くありません。
これは店舗デザインでも企業ブランディングでもポイントになっていて記事にも書いた「無印良品」なんかは代表格。
https://arjuna.jp/blog/takuya-miyazaki/%e8%83%8c%e7%ad%8b%e3%81%8c%e4%bc%b8%e3%81%b3%e3%82%8b%e3%83%96%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%82%b0/
ここにさらにクリスマスの限定性が加わって
行動経済学的にも、「限定」は最強のセールス装置なわけで、
今だけ、ここだけ、今日の天気だけ!という希少性は、人を強く動かします。
やっぱり人は限定によわいもの。僕もその一人です。
そして日本人って「物語が好き」
今年だけのマグ、この場所でしか買えないお菓子、寒さの中で飲んだホットワイン、一緒に行った相手との会話。
こういうストーリーの溜まりやすさ的なもの?が、日本人の感性に刺さる。そうおもいます。
●なんでもかんでもブランディング教材
デザインの統一、情緒の演出、五感のコントロール、限定性の使い方、SNS映えする構図やスポット。
行くたびに「今年はどんな戦略で来たのかな?」と勝手に研究したくなる。
そういう目で見ずにはいられない、そんな職業病を患ってます笑
さあ、今年はどこで乾杯しようか、
福岡の雪の日限定のマグカップ(イラストレーターの田中千智さんの作品)が可愛いな〜、天気ガチャ引きに博多まで行こうかな〜と。
絶賛検討中です。
