こんにちは。長崎のブランディングデザイン事務所「アルジュナ」の宮﨑です。
今回は、ちょっと味変。ブランディングというテーマでブログを書いてみたいと思います。
ブランディングという観点からブログを書くのは初めての試みなので
今回は、誰もが一度は目にしたことがあるであろう「無印良品」。
恐れ多いですが、これまで個人的にも愛用してきたブランドなので、親しみと敬意をこめて掘り下げてみたいと思います!
⚫︎無印良品の「らしさ」
「無印良品」と聞いて、まず何が頭に浮かびますか?
・えんじ色に白抜きのロゴ
・木や白壁に囲まれた落ち着いた店内
・文字情報だけのシンプルなパッケージ
・整然と並ぶ商品棚
そしてどこか静けさを感じる空気
これらを一枚の写真に並べたとしても、そこに「バラつき」や「違和感」は
ほとんどありません。
すべてが「無印らしい」世界観の中に収まっている。
それは、無印良品というブランドが、どの接点においても「らしさ」を大事にし、
ブレのない軸を持っているからだと思います。

⚫︎「無印良品」という名
まず注目したいのはブランド名そのもの。「無印良品」とは、「印(ブランド)を付けない良い品物」という意味。
名付け親はコピーライターの「小林一子氏」。
80年もの間「無印良品」のブランドを育てている方です。
1980年の誕生当時は、「ブランド志向」が強かった時代。
名前やステータスで商品を選ぶ傾向が主流だったそうです。
そんな中、「無印良品」はあえてブランドを否定することで、消費者に
「本当に良いものとは何か?」という問いを投げかけています。
ブランドを名乗らない、しかし良質である。それをそのまま名前にした潔さ。
そして今、その「無印」というスタンスこそが、むしろ強力なブランドですよね。
とても逆説的で興味深いネーミング。
ロゴデザインも非常に印象的。
生みの親は、グラフィックデザイン界の巨匠「田中一光氏」。アートディレクションは「原研哉氏」。なんともすさまじい。。。ブログを書く手が震える。。。
田中一光氏が携わった無印良品のポスターたち
参照:https://www.muji.net/ikkotanaka/index.html#/quote1
⚫︎ 「これでいい」という合理的満足感
無印良品のブランドメッセージとして有名なのが、
「これがいい」ではなく、「これでいい。」
というフレーズ。
一見すると妥協のようにも聞こえるこの言葉。
しかし実際には、理性的で成熟した選択を表しています。
創業以来、無印良品は
「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」
という理念を掲げ、過剰な装飾や派手さを排除してきました。
「これがいい」と感情的に飛びつくのではなく、
「これでいい」と納得して選ぶ。
その姿勢が、日常生活にフィットし、長く使えるプロダクトとして多くの人に愛される理由になっています。
⚫︎店舗空間と音楽でつくるブランドの「空気感」
店舗の空間づくりや、店内で流れる音楽にまで一貫性があります。
内装は木材や白壁、リサイクル素材など自然を感じさせる要素で構成され、そこに「余白」がしっかりと残されています。
店舗に足を踏み入れると、どこかホッとするような、整った静けさがある。
それがブランドの一部として体験に組み込まれているのです。
店舗は日本に限らず中国最大の世界旗艦店をはじめ世界32カ国で展開しており、
なんと海外店舗数は国内店舗数を上回り、アジアを中心に、北米、中東、ヨーロッパなど様々な地域に出店されています。
その全てに一貫性があります。
また、面白いのがBGM。
無印良品でどんなBGMが流れているかご存じですか?
無印良品では店舗で流す音楽もブランドの世界観を壊さないよう徹底されていて
(フィンランドなどの民族音楽など)
実際、無印のBGMはCDとして販売されており、僕も3枚ほど持っていますw
過剰でも過小でもない、控えめで誠実な音楽が、視覚以外からも無印らしさを伝えています。
⚫︎商品のプロダクト、パッケージの「引き算」の美学
無印良品の代名詞とも言えるプロダクト、パッケージデザインについて。
こちらも田中一光氏はじめ、プロダクトデザイナーの「深澤直人氏」など著名な方々がデザインを手がけています。
プロダクトは「これでいいじゃないか」が詰まったものばかりですし、

商品のパッケージは、情報や装飾をとことん削ぎ落とされていて…
茶色い紙ラベル、モノトーンのフォント、商品名と価格のみなど。
主張しないことで逆に目を引くという、不思議な存在感があります。

この「引き算のデザイン」もまた、「生活に溶け込む」ことを目的としており、
商品を通じて生活者の美意識や価値観に寄り添っているように感じます。
⚫︎「あり方」の表現
こうして見ていくと、無印良品のブランディングには、どの要素にも
「主張しない強さ」と「一貫性」が貫かれていることがわかります。
名前、ロゴ、空間、音、言葉、パッケージ。
それぞれが静かに、けれど明確に「無印良品らしさ」を語っている。
それは、見た目の派手さではなく、「どうありたいか」というブランドの「あり方」を真摯に伝える姿勢なのだと思います。
ブランディングとは、ただ格好良いロゴをつくることではなく、企業やブランドの「あり方」を丁寧にかたちにすること。
無印良品のブランディングを見ていると、改めてその本質に気づかされるように感じます。